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2010年11月22日(月) 01:31

電子教科書への地道

ようやく電子教科書の議論(意義からの観点)が活発になりだしたので、思いついた走り書き状態ですが、現場なりの詰めた観点を入れてみます。
後半は「こうしたほうがよい!」というよりか、現状横たわっている問題点の羅列に近いような…

なお、個人的には賛成、大賛成です。
面白そうというのが7割、これから避けて通れない、というのが2割、もうどうにでもな〜れ、というのが1割(笑)。


ちょっと長いので、続きはこちらから


1、筐体について
 ハードについては本体とインフラについて考えなければならないので、まずは本体について。

 義務教育制を考えると対象は小1〜6までの児童、中1〜3までの生徒となる訳ですが(高校の授業料が無料になったからと言って、義務教育制ではないので、ここでは対象外)、まぁ、公立学校は動物園状態といって過言ではないところが往々にしてあるので、
・堅牢性
・修理しやすい設計
・丸ごと交換しても負担になりにくい値段(あえて「原価」でも「定価」でもない表現にしました)
が求められると思います。

 堅牢性については、防水を含めて高ければ高いほどよいのですが、一定の限度があると思われます。ゲームボーイくらい固ければ問題ないのですが、そんな機体はそうそう期待できません。ごめんなさい。
実際にずっと壊れないとしても、子どもの成長に合わせて、ないしは技術の進度に合わせて、一度以上は修理・拡張・交換を要することになると思います。従って、それに耐えうる筐体でなくてはならない。特に値段の話は、もう少し後で書き足します。


 機能としては、WiFiとマルチタッチスクリーン、ある程度の解像度による文字の視認性ぐらいあれば。詰まるところもうipadで十分だと思います(小1の児童が使うことを考えると、もう少し画面は大きいものでよいかもしれない)。GPSがあれば◎。
 あ、あと盗難の危険性がべらぼうに高いので、本人認証の機構がないといけないと思われます。パスワード程度では、「(盗難→)悪徳業者→解除→転売」みたいなことが横行しそうです。わざと失くしたことにして再入手→転売…とか、ぞっとしますね。これも横行しそうです。これも後述します。


2、インフラ面について
 さて、筐体だけあっても学校施設側が整っていなければただの箱になります。例えばSFCとかだったらそのまま学生に配っても問題ないのでしょうが、あいにく公立学校はそうはいかない。
 ICT整備事業が平成21年度末にかけて行われましたが、ブツがつっこまれただけなので、まだ整備が追い付いていない学校が結構ある可能性も高い訳です。(ネットワークを引く事業ではなくパソコンやら電子黒板の現物をつっこんだはいいが、LANが各教室まで整備されていない学校はおそらく日本国中ごまんとあるはず、の意味)
 横浜市でいえば、「ネットデイ」なる「地域住民によるボランティア事業」によって、昨年度までにすべての学校・教室に情報コンセントが到達している「はず」ですが、予算の都合上「例えばバッキャ○ー製のHUBで5段カスケード」とかステキインフラになってたりします。「パソコンも子どもに壊されるから」「教室の場所をとって邪魔だから」といった理由で配置していない可能性も十分に考えられます。現時点で、このインフラが利用可能かどうかも不透明な状態だと思います(これは調査をすればすぐ分かるのですが…ボランティアが整備したものなので、各学校、その修繕にどこまで予算を割けるか、微妙です。いや、やらにゃいけんのですが)。

 まぁ、有線網による情報コンセントひとつでその騒ぎなので、圧倒的にこちらの整備が遅れている感が満点な訳です。

 で、教室というか学校でまともに使うなら、どう考えても無線LAN一択でしょう。ただ、単純に「無線LAN!」と叫ぶわけにもいかない。
 現時点で無線網を敷いている公立学校がどれくらいあるだろうか。引いていないなら、これから引くしかない。整備にかかる費用もそうですが、圧倒的に現場の技術屋が足りない。無線網を管理(下手したら設計・敷設も)するのは教職員なのですが、研修でどうこうなる話ではない。これは別口で考えどころですね。

 逆に言えば、電波をゆんゆん飛ばせれば、なんとかなりそうな気もします。脆弱なインフラで「綱渡り運用」ですが…


3、ソフト面 その1
 カネ、ヒトもそうなのだけれど、制度上の制限にひっかかる場合もある。
これまた横浜市の話で恐縮ですが、簡単に言えば「横浜市の全ての官公庁舎においては、無線LANは敷設を禁ずる」的な規則(一般的なキソクではなく、お役所用語です。条例の弱い版とでも思ってください。)があったりするので、それの改正を待つ必要がある訳です。
 これについては、既にある「児童・生徒用の制限ネットワークに限り、運用を認める」といった改正案で解決する気もするけれど、市議会とかで出ないかなぁ。どうせ地域との連携事業を進めてるんだから、FON的な発想で、管理者さえいれば制限ネットワークを地域にこのまま開放してもいいのでは、とか思ったり。地域還元になって喜ばれていいのではとか話も広がりそうなんだけど。(個人的にはそう思ったりしますが、行政の中の人間ですので、その是非は現場では判断しないことにしています。)

 こんな感じで国策であっても、自治体ごとで解決しないとならないことが結構あったりするので、時間はかかりそう。


4、ソフト面 その2
 国策で思い出した。電子教科書の主体は教科書なのか、教材なのか。まぁ、コンテンツが教科書で、筐体は教材に分類されると思うのですが…

 義務教育なので「国庫負担金から出すのだろうな!」とか、「いやいや、地方分権の時代ですよ、自治体が出せよゴルァ」みたいな押し付け合いが起こるかなと思います。教材としても、全員が必ず使わねばならないものは、保護者負担にするのはちょっと難しいかもしれない。いや、出来なくはないけれど。
http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/kyoukasho/gaiyou/04060901/012.htm

 各教科書会社から提供されるであろう教科書コンテンツは法令上無償になるだろう。電子教科書の良いところはここから派生する教科書無償給与事務の負担軽減にもあると思う(転校の度に違う教科書を無償請求する事務が発生する)。

 筐体について。自治体外の転校とかで使える/使えないといったことがあると困るので、標準仕様を国が打ち出さんといけんのですけど、そういった形で国がでてくると、地方が国から国庫負担で予算をもらい、仕様に沿って一般競争入札(卸業者ね)になるだろうなぁ。それでも選択肢は少ないはずなので、メーカーは2〜3に絞られるかな。モノがどれだけ被るか分からないが、デジタルテレビや理科教育振興費配当の時以上に生産が追い付かない気がする。すこし長期的な計画導入が必要ですね。まぁ、業者は儲かってよいのではないでしょうか。

ただ平成20年度で1071万人くらい児童・生徒はいるので、仮に1万くらいで負担が済んだとしても兆単位にのぼるわけで、国でも地方でも耐えきれんでしょうとか思うわけで。


5、ソフト面 その3
 公費(自治体からの現物配当を含む)で負担した場合、卒業後はどうするか、とかの問題も浮上してきます。転売ヤーがヤフオクで大量発生しそうな気もします。ブックオフに並ぶ諭吉先生の福翁自伝やD作さんの人間革命も真っ青ですね。
で、出来なくはないけれど、という「個人の金で本体を買わせる」のであれば、実は結構話は早い。その取扱いについて学校側はどうこう言えなくなります。遊び道具に使おうが何しようが。学校では「ゲームアプリの使用禁止!」ぐらいの校内ルールを敷いておけば運用できますから。

要は、ランドセルみたいな状態にできれば、いいんだけどなぁ。


6、ソフト面 その4
 ランドセルといえば、準用保護世帯(就学援助支給対象)や、要保護世帯(生活保護世帯のこと)は、入学準備費とか出たりしますし、後者については全て支給されますので、保護者負担になった場合でも無償提供になるでしょう。仮に紛失してもまた無償提供ないしは現金が支給されるはずなので、これもまた転売ヤーがアップを始めるかもしれません。

 高精度な物品を、多岐にわたる環境に配るということは、こうしたことに対処する準備と覚悟が必要になる、ということだと思います。


7、ソフト面 その5
 一番楽しいのは本体に何を入れたらいいのか、という話かと。もちろん電子教科書のリーダーはそうですが、それだけだと導入の意味がない。
 例えば教師用の端末から送られてくる情報を読む「電子連絡帳」や(メールで十分じゃないか?)、そのまま教師用端末と情報を転送できる「電子ノート(宿題提出システム・資料配信システム等も)」、出席&健康観察の負担を軽減する「出席確認システム」とか、wktkしますね。これは、現場の「教員」から出てきてほしいところなので、ここら辺で留めておきます。

 ここで立ちはだかるのは教員がどこまでこれらを使いこなせるか。さもなければ指導なんかできませんからね。資質の問題な気もするけれど、未だにパソコンの配当ですら「教育の監視だ、国は氏ね」みたいな団体がいたりするので、もしかしたら一番大きな壁かもしれません。。。(きっとその年はICT研修だらけになって、「見えない人件費」がすごいことになるんだろうなぁ。)


で、こういうのを実験するモデル校ってのは、子どもも教員もインフラも、他じゃ参考にならないくらい優秀なもんだから、いざ本チャンで投入すると全体的には失敗する、というオチが待っている。
ビーバップなヒドい学校でぜひ実験してほしい。


また何か気づいたら記事を書きます。

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